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『ファンシイダンス』『シコふんじゃった。』『Shall We ダンス?』『がんばっていきまっしょい』『ウォーターボーイズ』『スウィングガールズ』──これら大衆に広くアピールする娯楽性と作品性のバランスに秀でた作品を数多く手掛けてきた映画プロデューサー、桝井省志。大映を経て93年アルタミラピクチャーズを設立し、次々と話題作を製作してきた同氏は、07年も11年ぶりとなる周防正行監督の新作『それでもボクはやってない』、昭和の代表的ポップソングに材を採ったオムニバス『歌謡曲だよ、人生は』を発表している。独自のペースで映画プロデュースを続ける桝井氏の話は、大映時代のエピソードから映画宣伝へのスタンス、さらには自らの作品への想いにまで広がった。
大映で学んだ映画製作の原点
僕が大映に入社した頃の日本映画界は斜陽で、学生の就職先としても不人気な業界でした。だから比較的上向きになった現在の映画業界に若い人が憧れて入ってくるような状況は、当時を知るものとしては妙に居心地が悪いと言うか(笑)。その大映には企画部員として採用されたんですが、実際やっていたのは旧作ビデオの営業やパッケージのシール貼り。あとはTVの2時間ドラマの製作進行とかをやりつつ、アダルトビデオを製作してましたね。でもそういった経験を通して、周防監督や磯村監督と出会った。
その大映時代の苦い思い出としてあるのは、井筒和幸監督の『犬死にせしもの』でした。初めて本格的な映画に参加できた情熱のまま突っ走って日程を超過し、予算を大幅にオーバーしてしまった。それで、企画に見合った適正予算を組む重要性を痛感しましたね。最初に予算設定を間違えてしまうと、映画に携わった人間が皆不幸になる。だから大映退社後に『Shall We ダンス?』を企画した時は、周防監督と想定製作費が集められなければ中止にしようと話し合いました。
それともう一つ大映の社員時代に学んだのは、映画の責任は最終的にひとりのプロデューサーが取るべきだということ。ご意見まとめ係りで皆さんの意見を聞く映画作りを見てきて、その虚しさを間近で感じてきましたからね。組織で映画作りをすると、どうしても責任の所在が不明になってしまう。それじゃあ、失敗した時に誰が責任を負うのか、という部分ですよね。
また最近は、映画の出資者がキャスティングから脚本、演出までコントロールしようとするケースもあると聞きます。その点でやはり懐が深かったのが、大映の徳間社長。彼はワンマンで知られていましたが、映画製作の際にはあくまで出資者に徹し、内容には一切干渉しなかった。つまり作り手に対する敬意が大前提にあり、自分はそれにお金を出すという立場は決して崩さなかった。
うちの場合も映画を作る時は、複数の出資者を募ります。でもキャスティングや脚本は自分たちでジャッジしていきます。このやり方に賛同してくれる出資者の方々に、これまで我々は参加してもらってきました。それで失敗したら、責任はアルタミラピクチャーズが取る。その考えを一貫してきたから、アルタミラピクチャーズという会社を認知していただいているのかと。
では我々の企画選定の基準はどこにあるかと言うと、シンプルに新鮮で面白く感じられるかどうかに尽きる。過去のヒット映画の二番煎じを作ろうとは決して思いません。マーケティングを読む映画作りには、魅力を感じないからです。確かに、痴漢冤罪裁判を真正面から扱った『それでもボクはやってない』は観客に届けづらい企画ではあったけれど、それだけにやりがいはあった。もし出資が集まらなければ、自社製作してミニシアターで公開するぐらいの覚悟はありました。
草の根宣伝活動への信念
もちろん映画が完成すれば、多くの観客に見てもらうため宣伝・配給会社と協力していくことになります。ただマスに向けた情報量勝負の宣伝だけでなく、僕らとしては劇場スタッフや観客、さらにはDVDの販売・レンタル店の仕入れ担当者との対面コミュニケーションも重視したい。東京から情報発信すれば全国に伝わるわけですから、足を使う必要はないのかも知れません。でも数値には現れなくても、草の根的な宣伝活動でしか伝わらない想いもあるんです。『スウィングガールズ』のキャンペーンで行ったあるシネコンは、スタッフのモチベーションが高く、トイレにまでポスターを貼ってくれていました。また『それでもボクはやってない』の公開時には、かつて『ファンシイダンス』でお世話になった地方のマスコミや劇場関係者の方と再会し、地方キャンペーンを支えてもらいました。我々や監督は今後も映画を撮り続けるのだから、劇場と継続的な関係性を築くことも大切なんです。僕は宣伝でも、経済効率で測れない部分を信じたいんですよ。『ウォーターボーイズ』の宣伝キャンペーンで映画の舞台だった川越の商店街のセールで、矢口監督に前売り券を売って回ることまでしてもらったのは、懐かしい思い出です(笑)。
自作への想い
その『ウォーターボーイズ』は、一歩間違えればキワモノと受け取られかねない危険な企画と見られていました。そのリスクを承知で出資してくれたフジテレビさんへの恩義もあり、TVドラマ化を了承した。でも、その後の『ウォーターボーイズ』や、『スウィングガールズ』のTVドラマ化、海外リメイクは許可していないのが現状です。『Shall We ダンス?』のハリウッドリメイクにしても、会社経営上の助けにはなったけれど、それ以上のものではありません。
桝井省志氏プロフィール
1956年生まれ。大映企画部を経て93年、周防正行、磯村一路両監督、小形雄二プロデューサーと共に、アルタミラピクチャーズを設立。周防正行、磯村一路、矢口史靖各監督作品の他、『タカダワタル的』(03)『ザ・ゴールデン・カップス ワンスモアタイム』(04)『不滅の男 エンケン対日本武道館』(05)などの音楽ドキュメンタリーもプロデュースしている。
やはり僕らの作品が絶対という自負がありますから。最近はコンテンツホルダーという言葉がもてはやされて、ひとつの原案を複数のメディアで展開するビジネスモデルが注目されてるけど、僕らとしてはオリジナルの映画だけで充分。逆にそんな状況だからこそ、映画館でしか観られない作品に希少価値がある。映画が唯一無二の作品と思えれば、その方が良いじゃないですか。
(月刊DVDナビゲーター2007年12月号より転載)
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