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第15回 松竹(株)映像本部 編成部 映像企画室室長・榎望

榎望氏
松竹(株)映像本部 編成部
映像企画室室長

榎望 氏

企画から現場・編集・宣伝まで分かる総合力がプロデューサーの理想 06年発足した松竹の自社企画開発部署「映像企画室」。同部署を率いる現場叩き上げの映画人・榎望氏に、その目指すべき場所を聞く

06年10月、松竹は映像本部の機構改編を行い「編成部」を設置。その下に、洋画買い付けを行う「洋画編成室」、アニメとビデオストレート作品等を扱う「コンテンツ編成室」、他社企画を扱う「邦画編成室」、そして自社製作の企画を手掛ける「映像企画室」の4部署を設けた。本稿では「映像企画室」の存在に注目。同室長である榎望氏に、同室の果たす機能と展望を尋ねた。

自社企画を開発する「映像企画室」

興行網への作品供給元を明確にすることと、各プロデューサーが公開、二次利用まで一貫して携わる体制を整えるために、松竹は編成部を設置しました。その編成部で邦画を扱う部署が「邦画編成室」と「映像企画室」。「邦画編成室」は他社からの持ち込み企画を担当する部署で、外部への窓口になっています。それに対して「映像企画室」では、自社企画を開発する。

自社企画とは、原作もの、オリジナルに関わらず題材を決め、脚本を作り、メインキャストを主体的に決めるということです。それと並行してパートナーを決め、協力し合いながら映画を具体化していきます。製作委員会の幹事会社は他社さんであっても構わない。つまり松竹発の企画を立ち上げることにこだわった部署です。

企画を選定する際にはどうしても認知度の高い原作物に傾きがちですが、我々としてはオリジナル物にもトライしていきたい。でもその場合、東宝さんの『THE 有頂天ホテル』や『舞妓 Haaaan!!!』の三谷幸喜さん、宮藤官九郎さんのような、天才的なクリエイターの方が必要だとも思っています。また、邦画を巡る状況は好転していますが、全国規模の成功が優先されるため、かつての『刑務所の中』や『あ、春』のようなミニチェーン公開の企画を実現する余裕がないのは、ちょっと寂しいですね。

現場主義とデジタル技術の探求

そのような状況の中、映像企画室としては年間5〜6本の企画をコンスタントに具体化していきたい。企画、ファインナンスから現場、公開まで全プロセスに関わるため、現在、映像企画室には8人のプロデューサーが所属しています。目指すところは、映画制作のプロセスすべてに精通したプロデューサー集団。もともと僕は、ディレクターズ・カンパニー時代の相米慎二監督に誘われて、映画の世界に入ったんです。その後、勅使河原宏、大林宣彦各監督らの現場で助手をして、プロデューサーになったのは滝田洋二郎監督の『僕らはみんな生きている』から。また、崔洋一監督の現場ではライン・プロデューサーも兼任し、制作費の細かい計算までやりました。だから、企画から始まり製作現場、編集まで見て初めて、プロデューサーと名乗れるんだという矜持はあります。

またプロデューサーは撮影現場のみならず、ポストプロダクションにおける最新の技術にも精通している必要があると思います。例えばワイヤーを消せるデジタル技術があって初めて、『グリーン・ディスティニー』のような活劇や、『ゲゲゲの鬼太郎』のような映画も可能になった。常にそうした最新の技術を把握してないと、プロデューサーは現在どういう企画が実現可能か逆算できません。『ゲゲゲの鬼太郎』は『カンフー・ハッスル』や『少林サッカー』の特殊撮影を手がけた香港のセントロ・デジタル・ピクチャーズを始め、20社のプロダクションがピラミッドフィルムの指揮のもと、700カットという松竹の映画最大のデジタルカットを作りましたが、5年前だったら現在の形では実現不可能だった。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのVFXを担当したニュージーランドのWETAデジタル社にも、非常に興味があります。なにしろクリエイティブなので。また、今後はもっと極端に、背景をすべてアニメーションにしてもいいし、精巧なミニチュア、俳優、別撮りした素材などをコンピューター内で撮影して1本の映画を作れないか考えている。加えて3Dの可能性も探っています。

もちろん、そういった最新のデジタル技術のみならず、大規模なセットをしっかり組む昔ながらの映画作りも大切だと考えている。松竹の京都撮影所には伝統的なノウハウを熟知したスタッフも多いので、彼らの職人的な技術も併せて継承していきたいと考えています。

”作家性”へのこだわり

企画・脚本・メインキャストと並び、監督の選定も当然ながら重要です。その際には映画・TVとその出自によらず、企画ごとに最適な才能であることが判断基準になる。これまでも『子ぎつねヘレン』の河野圭太監督など、TVで経験を積んだ監督とも仕事をしました。やはり、TVの連続ドラマで場数を踏んだ監督の現場捌きは、非常に頼りになりますよね。

そのような経験値は当然大切ですが、一方で強固な作家性にもこだわっていきたい。実際、強い個性によらなければ映画化不可能な企画も、確かに存在します。僕は、長回しを徹底することで現場を一体化させていく、相米慎二監督から映画を学んだ。その経験から、強烈な映画作家の周りには、魅力的な才能が集まってくることを実感として知っています。例えば、『岸和田少年愚連隊』での井筒和幸監督は一日中、映画の細部をどう作るか延々考え抜いていました。また『クイール』での崔洋一監督は、22万フィートという松竹史上最長のフィルムを回し、とことん犬の表情にこだわりまくった。そういった妥協を知らない映画監督とは、是非また一緒にやりたいですね。崔洋一監督とは09年公開の白土三平原作『カムイ外伝』で、再び組むことになります。是枝裕和監督や原田眞人監督とも、またやってみたい。

榎望氏プロフィール

1984年松竹入社。相米慎二との縁から映画の世界に入り、勅使河原宏、大林宣彦、竹中直人各監督らの作品でアシスタントプロデューサーを担当。92年、『僕らはみんな生きている』でプロデューサーとなる。『トイレの花子さん』(95)『岸和田少年愚連隊』(96)『あ、春』(98)『刑務所の中』『壬生義士伝』(02)『ニワトリはハダシだ』(03)『血と骨』(04)『子ぎつねヘレン』(05)『ゲゲゲの鬼太郎』などプロデュース作品は多数。06年10月、松竹の映像本部の組織改編に伴い、映像企画室長に就任した。

加えて、以前から是非一緒に映画をやりたいと考えているのが、石井隆監督。『夜がまた来る』のラスト、笠松則通さんのカメラがクレーンで上昇し長い夜が明ける長回しは強烈ですよね。そういった優れたクリエイターと一緒に仕事をしていると、大変ですが、楽しいし実りが多いです。
(月刊DVDナビゲーター2007年11月号より転載)

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