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再考!日本映画
第5回 株式会社ビーエス・アイ

丹羽多聞アンドリウ氏
(株)ビーエス・アイ 編成本部副部長 編成部+制作部プロデューサー
丹羽多聞アンドリウ氏

“小さな予算の大きな企画”をメディアリレーし、相乗需要喚起を目指す “年間約120本のオリジナルコンテンツを製作し、BS局の売り上げトップを誇るTBS系列のBS-iから、“マイナーメジャー”ならではのメディア戦略を探る

新進アイドル演じる十代の女性刑事が難事件解決に挑む「ケータイ刑事」、同名実話怪談集を原作にしたショートフィルム形式のホラー連作「怪談新耳袋」、80〜90年代の隠れた名曲をタイトルと主題歌に据えた恋愛ドラマ「恋する日曜日」──新たな才能を積極登用し、実験性の高い企画に挑んだTVドラマとその映画化で注目を集めてきたBS-i。資金力・媒体力では地上波に及ばない小さな放送局が見せる、独自のメディア展開の可能性とは──。

放送、興行、パッケージの連動

今、日本映画で二十億円以上のメガヒットを飛ばしている作品は、地上波TV局の製作委員会への参加、大手メジャーによる配給に加え、総製作費が五億円以上のものがほとんど。一億五千万〜三億円規模の予算の作品は、一番回収に苦しんでいるという現状なんじゃないでしょうか。その中で、地上波ほどの媒体力を持たず、大型チェーンによる公開も難しいBS局が映画ビジネスで成功するためには、まず広告費を含め1億円以下の予算で製作することが現実的であると判断した。つまり、TBS本社が媒体力の強みを生かし、全国200館クラスの公開規模で大きな成功を狙うならば、我々は100館以下で堅実な商売を目指すと。

ただ劇場の興収だけで総製作費の回収以上を見込むのは難しい。そこで、放送、興収、DVDセールスを含め、トータルでペイするシミュレーションを立てているんです。そうなると当然、パッケージ市場に適した明確なフックを、製作段階から意識することになる。例えば劇場版第2作『ケータイ刑事 THE MOVIE 2〜』の現場にはDVDユーザーの嗜好性を考えて、メイキング用のハイビジョンカメラを2台入れている。つまり、DVDの特典映像を予め想定して、現場に臨んでいるわけです。

それと、これはBS-iが小さい会社であることのメリットなのですが、僕ひとりで製作と編成を兼任している。ですから、放送、映画公開、DVD・CDリリースすべてをひとりの裁量で効果的にリンクさせ、相乗需要の最大化を狙うことが容易にできるんです。「ケータイ刑事」を例に挙げると、映画が公開されれば既発のTVシリーズの、次のTVシリーズがスタートすれば前シリーズのDVDが再び動く。つまり、それぞれがそれぞれの効果的なプロモーションになるように、スケジュールの流れを作っているわけです。加えて、地上波というメジャー媒体での再放送で認知度を高めることができるのも、TBS系列のBS局である強みですね。もちろんクオリティの高いコンテンツの製作が、大前提になりますが。

TV局式の映画プロデュース

最近では僕が入社した20年ほど前と比較して、映画とTVの垣根はほとんどなくなっています。デジタルビデオで撮影される映画も多くなっているし、TVと映画の人材の往復も珍しくない。実際我々が作るTVドラマの約8割を、映画監督が演出してますからね。

加えて、最近はフジテレビやTBSが映画に参入して成功を収めたことで、プロデューサー主導というTV局のやり方が、映画界にも浸透し始めている。そういったスタンスは、僕が映画をプロデュースする場合も同じですね。TVドラマ版「ケータイ刑事」で試みた、CM抜きの全編1カット撮影や公開収録、活弁・オペラ・ミュージカルの採用といったトリッキーな仕掛けは、僕がプロデューサーの立場から提案した。同様に『さよならみどりちゃん』では、ラストのカラオケの長回しはテイク尻まで丸々使うべきだと主張し、現在の形になりました。それまで拒否していたカラオケを大声で歌い切るヒロインの姿を1カットで記録することで、彼女のささやかな成長を観客に伝えたかったからです。プロデューサーとして製作に携わっている以上、TVの場合は視聴率も気にしなければいけないし、映画ならきちんと資金を回収しなければならない。そういう立場から見て違うと思ったら、当然意見することになります。

BS-iの“2011年以降”

地上波ではリアルタイムで弾き出されている視聴率という数字から、ある程度自由にコンテンツ製作できる現状も、BS-iのチャレンジ精神に繋がっています。しかし2011年に地上波アナログ放送が打ち切られることで、地上波デジタルの視聴可能世帯は、現在の2000万円から全世帯になる。それに伴って媒体としての影響力が大きくなれば、当然数字への要求も出てくるでしょう。現在は、パッケージ市場でのセールスも含めた長期的なスパンでの収支計画を立てていますが、地上波同様に即時的な成果を求められるようになる可能性もある。

ただ僕は、視聴率のことは一旦忘れて、面白いモノを作りたいという初心に立ち返るよう、社内の人間には常々言っている。これまでも、魅力的なコンテンツを製作したいという動機を最優先して、実績や知名度に左右されることなく役者やスタッフを起用してきました。主演女優と主題歌のバーターを要求してくるような事務所行政には一切付き合うことなく、伸びると確信した自分の目を信頼して、宮アあおい、堀北真希、小出早織、夏帆といった新人を主演女優としてデビューさせ、

丹羽多聞アンドリウ氏プロフィール

87年TBS入社。社会部記者を経て、ドラマプロデューサーとなる。02年よりBS-iに出向。「ケータイ刑事」「恋する日曜日」や「怪談新耳袋」「スパイ道」「68FILMS」などの短編連作シリーズを製作し、企画性の高さと新人キャスト・スタッフの積極登用などで注目を集める。03年、新人脚本家発掘を目的にBS-i脚本賞を設置。さらに、新人監督・プロデューサー育成を目指すBS-iアカデミーも本年10月2日から開講する。「ケータイ刑事」シリーズ最新作『〜銭形雷(らい)』は12月22日リリース。劇場版第2作『〜THE MOVIE 2〜』は07年3月10日公開。

『地獄甲子園』の山口雄大、『怪談新耳袋 ノブヒロさん』の豊島圭介をはじめ、井口昇、三宅陽太、安里麻里といった新しい演出家にも、早い段階から注目してきた。ショートフィルムを積極的に製作してきた理由には、低予算かつ短時間で製作できるからだけではなく、これからの才能と仕事をするチャンスが増えるからというのもありますからね。

BS-i主催の脚本賞は今年で3年目を迎えましたし、次代の映像界を担う監督・プロデューサー育成を目標とする開局5周年企画「BS-iアカデミー」の開講も控えている。BS局でのビジネスが今後大きくなっていっても、企画のエッジを効かせ、キャスティング、スタッフィングで冒険するという、BS-iの基本姿勢はブレなく一貫していくつもりです。

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