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再考!日本映画
第2回 日本テレビ放送網(株)

奥田誠治氏
日本テレビ放送網(株) コンテンツ事業局 映画事業部長
奥田誠治氏

世界市場で勝負できる映画─時代を超えて残る映画 『ALWAYS 三丁目の夕日』『デスノート』とヒット作が続く日本テレビ。これらのエグゼクティブプロデューサー・奥田誠治氏に問う日本映画

もはや世論的には日本映画をヒットさせる不可欠条件とも言われるもの。それが地上波TV局の製作委員会参画だ。興収33億円を超えるヒットを記録した『ALWAYS 三丁目の夕日』、ミニチェーン公開で異例のロングランとなった『かもめ食堂』、そして原作力に加え、前後編連続公開や、本編一部をTV放映するといった大胆な戦略も奏効し、初登場でいきなり洋画超大作を抜いて、興行ランキングトップワンに踊り出た『デスノート』。確かにこれらにも地上波TV局、“日本テレビの力”は大きく絡んだ。しかし、『デスノート』はさておき、『ALWAYS〜』や『かもめ食堂』の訴求力を、それに等しいだけの大きさで事前に読めた人は、果たして業界内にどのくらいいただろうか。今、敢えて記した“日本テレビの力”─それは決して、大量露出で集客する放送の力、つまり媒体力だけを指すのではない。想定内ではないヒットを生み出す力と言えば、分りやすいだろうか。今回はその源泉を追ってみる。

クリエイター尊重主義

ヒットの方程式なるものが本当に存在するなら、僕自身、是非知りたい(笑)。ベストセラー原作、豪華キャスト、人気ジャンル、そして強いチェーン公開─これらが揃えば必ずしもすべてがヒットするとは言い切れません。また、TV局のメディアパワー活用も今や必ずしもヒットの絶対条件ではないでしょう。事実、TV局が製作委員会に参加しなくても20億円の興収を上げた『亡国のイージス』のような例もある。つまりは媒体力・宣伝力だけが作品の成否を決定する時代では、もはやなくなっているのだと。そんな中で、結果として僕がさまざまなジャンル、時にはヒットの前例がないような作品に携わってきたように見えるなら、それはおそらく“人”で作品を選んできたからでしょう。例えばそれが『ALWAYS〜』ではロボット(本作の製作プロダクション)の阿部社長の情熱だったし、ジブリ作品は鈴木敏夫氏との出会いだった。『かもめ食堂』も20数年前に日本テレビで『転校生』が製作された時に観た小林聡美さんの印象が未だに残り、ずっと仕事を一緒にしたいと思っていた。映画は決して一人で作れるものではありません。ですから、脚本からカット割まで徹底的に管理するプロデューサーもいるとは聞きますが、僕自身は強い自己主張で作品をコントロールすることには、あまり関心がない。その意味では、プロデューサーの仕事は、優秀なクリエイターが能力を発揮できる環境作りにあるんじゃないかと。

マーケティングは重要だが…

そんな中、『ALWAYS〜』に関しては、僕自身、成功を確信した瞬間があったんです。それは3分程度の短いパイロット版を観た時。そこには、今はもう動かなくなって荒川遊園地に展示されている都電が走り、作品のエッセンスである人情悲喜劇も描かれていた。それはまさに、マーケティングではなく、肌で確信した成功です。

もちろん、マーケティングは重要です。興収で70億も80億も超えるようなメガヒットも作っていきたい。ただ、同じように何本かに一本は、観客の人生観を根底からひっくり返してしまうような作品も作りたい。それができなければ、早晩飽きられてしまうだろうし、今の日本映画の好況は結果的にバブルだったという答えを出さなければならなくなってしまうとも。実際、今の日本映画に海外マーケットで勝負できる作品がどれだけあるのか、それらを考えた場合、アニメや一部のホラー作品以外、非常に心許ないと言わざるを得ないのも確かです。そして、映画製作に携わっている以上、世界市場で勝負できる作品を世の中に送り出したいという想いもある。

これは随分前の話になりますが、センセーショナルな少年犯罪が社会問題化していた当時、リアリズムを追求した『もののけ姫』の戦闘シーンの是非を問う声は社内にもありました。しかしたとえ咀嚼し難くても、正面から直視しなければならない問題もある。そういった倫理的な姿勢に貫かれた作品が、時代を超えて残っていくとも思っています。世界市場で勝負できる作品、それは“時を超えられる作品”とも言えるかも知れない。製作者としてはマーケティングと同時に、そこを意識したいとも思っています。

有料にふさわしい価値の創出

TVは基本的に無料で観られるもの、それに対し、映画は有料のコンテンツです。また、かつては劇場での鑑賞のみ、つまり一回性のメディアであった映画のあり方が、パッケージ市場の成熟によって変化した。つまり、レンタルで繰り返し観賞する、さらにはセルとして保有する需要がすっかり定着してきましたからね。そしてそれらは、確実に映像産業を豊にしています。しかし、となれば製作する我々にも、いかに劇場にお金を払ってでも観にきていただける作品を作ると同時に、いかにパッケージ化された時に、再見したい、さらには所有したいと思ってもらえるのものを作っていくかが課せられます。これも、今後のひとつの課題ですね。

受け手に対価を支払ってもらうだけの価値─そこに対し、製作者側はどこまでも真摯であるべきでしょうし、チャレンジングでもあるべきでしょう。

奥田誠治氏プロフィール

80年日本テレビ入社。編成部配属の後、映画部に異動。プロデュース及び担当した主な作品に『風の谷のナウシカ』からすべてのスタジオジブリ作品。宮崎駿監督作『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』、宮崎吾朗初監督作『ゲド戦記』では製作担当。押井守監督作『イノセンス』では製作委員長。実写作品では、『ガメラ2』『同3』『回路』『サトラレ』『東京タワー』などを製作。『ALWAYS 三丁目の夕日』『かもめ食堂』『デスノート 前編』『同後編』ではエグゼクティブプロデューサーを務める。第25回藤本賞特別賞他受賞。

現在、公開中の『デスノート』は6月と11月の連続公開と、新しい試みをした作品です。最初から前後編に分けての公開例では「マトリックス」シリーズなどがありますが、最近の日本映画ではなかった形です。これはユニークな公開形態で耳目を集めようとしたのではなく、ボリュームある原作を、ダイジェスト的にしないで映画化する方法を探っていった結果なんですが、これが今後の日本映画のひとつのあり方になれば、それも面白いかなとは思っています。かつて日本映画が黄金時代と言われた頃、毎週のように連続活劇が公開されていた。本作は非常にタイトなスケジュールでの製作でしたので、現場はその頃の活気を少し味わったんじゃないかな(笑)。

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