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日本映画が好調だ。インフラ整備で04年、史上最高額となる2109億円を上げた年間映画興収。05年は微減となったものの、日本映画シェアは40%超と、総興収818億円を記録した。そしてメガヒットの基準とされる興収20億円を超える作品11本中、東宝配給作品の占める数、実に10本。苦戦が続く洋画大作と対照的に勢いづく日本映画。果たしてこの現象はバブルなのか。我々パッケージ業界はこの流れを享受し続けられるのか。今、改めて日本映画の今後を考える新連載。第一回は、日本映画復権の鍵と言われる東宝調整部だ。
なぜ、今、日本映画なのか
シネコンによる劇場環境の変化に加え、続編やリメイクものが目立ち、企画の枯渇が取り沙汰されるハリウッド映画からの観客離れ、及び90年代を席巻したトレンディドラマが果たしていた役割を日本の恋愛映画が担うようになった点が、まずは日本映画復権の要因として挙げられるでしょう。そしてさらに考えられるのが、日本映画の作り手たちの変化です。70〜80年代、あるいは90年代の初めまでは、どちらかというと監督や脚本家たちの作家性が色濃く反映された作品が評価される風潮が根付いていました。それが結果的に、宣伝やイベント感に煽られエンタテインメントを期待して劇場に足を運んだ観客を裏切ることもあった。しかし現在の作り手たちは、観客の目を意識した作品を志すようになってきている。30年近くの歳月をかけ、ようやく業界の体質改善が進んだ実感があります。
映画とTVのボーダーレス化
現在東宝の興行は主に150、250、400スクリーンの三パターン。その規模から、自ずと東宝でヒットする作品の傾向が出てきます。それはTVに喩えるなら、ゴールデンタイムで放送される連続ドラマ、多くの観客から支持される映画ということです。映画からTVの連ドラ、再び映画の続編というパターンで現在、興収70億円を超える勢いの『LIMIT OF LOVE 海猿』に顕著なように、今やTVと映画の境界線はなくなったと言っていい。
とは言え、ビジネススキームという点を切り取れば、製作委員会へのTV局の参加、それに伴なうTVでの露出度の大小だけが、ヒットの絶対不可欠条件ではありません。各社、いろいろな形があって然るべき。ただ東宝が基本的に配給していこうとする“TVのゴールデンドラマのような映画”は、イコールTV局が出資して放映権を所有したいコンテンツでもある。逆も然りで、ゴールデンタイムで放映したいような映画は、東宝の配給と親和性が高い。ですから最初からTV局ありきで考えているわけではなくて、お互いの求めるものの“結果”として、TV局が製作する映画が多くなってきているわけです。
また、TV出身の演出家は現場経験が豊富でスキルを磨く機会に恵まれている点も、最近の傾向を語る上では重要なポイントかも知れません。実際、連ドラの演出を手掛ければ、年間20数時間の映像を作っている換算。数年に一本しか撮らない映画監督よりは、日々、スキルアップしているという見方もあるでしょう。今はTV、CM、PVなど様々なバックグラウンドを持った監督が映画界に進出していますが、その出自は監督としての才能と無関係。大切なのは、エモーショナルな作品を作り、広く観客に受け入れられることなんです。
企画の見極めに大切なこと
ヒット作に不可欠なのは二点。笑いや涙といった誰しもが共有できる普遍的感情に働きかける要素と、時代限定で支持される何か、つまり同時代性という要素です。『世界の中心〜』『いま、会いに〜』には、普遍性も時代性もあったと言えるでしょうし、30年前の三島由紀夫の小説を原作にした『春の雪』がそれらに届かなかったのは、結果的に時代性が欠けていたのかも知れない。ただ時代性を意識し過ぎると、全く挑戦ができなくなってしまうのも事実です。「不景気だからこそ腹の底から笑えるコメディが良い」、「いや現実から離れたファンタジーだ」─など、ヒット分析が後付け理論になりがちなことは否めません。時代性とうまくマッチすれば予想外の大ヒットになることはありますが、そこが伴なわなくても、普遍性さえ押さえていれば大失敗はないとも考えています。
また、大ブームだったホラー映画が量産され過ぎて下火になったとも言われていますが、ホラーは普遍性を持ったジャンル。ですから、ホラーがジャンルとして終わったとは判断してません。
映画にとってのパッケージ市場
パッケージ化を想定して映画を作り始めるかどうかは、クリエイターによって個人差があります。ただ劇場でのヒットとパッケージの売れ行きは基本的に連動しますから、プロデューサーたちは誰もが、まずは劇場での成功を考えている。それがパッケージ市場を豊かにする大きな要因になりますからね。やはり入口で成功させることが、一本の映画の将来的展開を成功させる上でも、何より重要ではある。
いずれにせよ、大切なのは現在の日本映画の勢いが“バブル”ではないことを、一本一本の積み重ねで確実にしていくこと。そのためのユーザー本意の映画作りが我々にとっては今までも、これからも変わらない課題です。
市川南氏プロフィール
1990年、東宝に入社。12年間宣伝部に所属し、宣伝プロデューサーとして、「学校の怪談」シリーズ(95〜99)、「ラジオの時間」(97)、「千と千尋の神隠し」(01)など、約30作品を担当する。2002年、映画調整部に異動。現在は、配給作品の編成、自社製作作品の企画に携わる。主なプロデュース作品に、「模倣犯」(02)、「世界の中心で、愛をさけぶ」(04)、「いま、会いにゆきます」(04)、「春の雪」(05)。エグゼクティブプロデューサーとして、「電車男」(05)、「サイレン」(06)等に参加する。
東宝調整部の機能
東宝調整部の主な業務はふたつに大別される。テレビ局など製作会社からの企画を取捨選択し、映画の公開時期・規模を決定する編成業務と、自主製作映画の企画だ。そもそも調整部の歴史は昭和40年代、映画会社の専属だったスター俳優が次々と独立し、自前のプロダクションでの映画製作に乗り出した当時にまで遡る。“専属”という形態の崩壊により、社内と社外との窓口機能(東宝の場合は調整部がそれにあたる)が必要になったことから設置された機能と言うわけだ。ちなみに現在では、地上波テレビ局や大手出版社、タレント事務所といった製作委員会の常連企業からの情報が集まる最先端の部署として、企画業務の比重が大きくなっている。
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