|
|
 |
 |
 |

|
- 掛尾:
- 「人のセックスを笑うな」は、テアトルという自ら映画館を持ち、映画を熟知した会社が、単館公開にこだわってやったから成功したんでしょうね。でもここで問題なのは、日本映画も外国映画も、小さな会社が単館で公開することが難しくなっているという現状です。例えばかつて阪本順治監督の「顔」は単館で1億円の興収を上げましたし、単館ロングラン上映は他にも「宋家の三姉妹」、「山の郵便配達」など、成功例はたくさんありましたが、いまはそれは不可能に近い。
- 大高:
- 単館公開の場合、せいぜい4千万円が限界ですね。かつてはミニシアターに劇場それぞれのカラーがありましたが、単館拡大が定着してそれがほとんど無くなった。拡大すれば宣伝費もプリント代も上がるし、とにかく全部を拡大公開という風潮は問題ですよね。いまは単館で10週以上公開できるのは岩波ホールぐらいですか。いや、岩波ホールもロングランは少なくなってきた。
- 掛尾:
- ミニ・チェーン3館で4週間やるより、単館で12週間やるほうが効率がいい場合もありますよね。だから昔の状態に戻したいという関係者も多いんです。
- 大高:
- その問題を問うと、洋画配給会社は「買い付け価格が上がり、単館では元が取れなくなった」と言いますが本当にそうなんでしょうか。回収方法は他の手段もあるのではないか。作品によっては単館ロング興行でも成り立つのではないか。単館で10週間やって興収をどのくらい見込んで、買い付け額や製作費をどのくらいにして、宣伝費をいくらぐらいにするのか、配給担当者やプロデューサーが綿密な対策を立てれることができればね。
- 掛尾:
- でも単館では「かもめ食堂」や「寝ずの番」のように興収5億円を達成するのは絶対無理です。だから拡大した方がいいとなってしまう。そこが考えどころなんです。いまは以前と比べてミニシアターの数も増えましたし、例えばアキ・カウリスマキの「街のあかり」のようなヨーロッパの名作をやっても情報の消費期限が短くなって、粘れなくなっていると聞きます。
- 大高:
- キネマ旬報のベストワンになった「長江哀歌」はシャンテ・シネで公開されたんですが、あのクラスでも興収4千万円しかいかない。いま、ヴィム・ヴェンダースの作品を単館でやったとしても1億円はいかないでしょう。以前のミニシアター全盛時代は、尖った作家の作品をかけても観客が集まったし、それに相応しい時代の空気がありました。
- 掛尾:
- 80年代はジム・ジャームッシュやヴェンダース、タヴィアーニ兄弟といった素晴らしい作家が続出しましたし、若い観客もそれらの作家を支持していました。でもその流れが続いていないんですよね。若い人たちがそういう作品には興味を持たないで「恋空」や「クローズZERO」を観てしまう。
- 大高:
- でも私が思うのは、観客が変わったというより、例えば「長江哀歌」なんかは幅広い観客動員ははじめから無理な作品ですよ。何と言うか映画ファン以外に訴えかける普遍性がない。80年代は映画ファン以外の周辺の熱気が凄かったですから。「ニュー・シネマ・パラダイス」あたりは典型ですよね。それがいまはない。
- 掛尾:
- 「旅芸人の記録」は純粋なアート系映画でしたけど、一般の映画ファン以外の人たちも映画館に詰め掛けました。皆、4時間のギリシャ映画を見て、分からないなりに“凄い”と驚いていましたから。だから私は、こうした作品を伝えるメディアの力が以前に比べて弱くなっているのではないか、と思っているんです。この20年余りでメディアも観客も大きく変わった。
- 大高:
- 私たちが若い頃は、喫茶店でキネマ旬報の決算号を囲んで、普通の学生たちがベストテンの結果を「俺の評価とは違う」「何であの作品が入っていないんだ」なんて普通に議論していましたからね。
- 掛尾:
- そんな光景はいまは有り得ないですね(笑)。そうした状況にある日本映画界の中で、私が大手以外のプロデューサーに言いたいのは、「“日本のビル・コン”を目指せ」ということなんです。東宝と組めるプロデューサーは組む。他の大手も頑張って日本映画のパイを広げる。黒沢清や青山真治、塚本晋也など世界的に名声が確立された作家と組むのもいい。
だけどそれ以外のプロデューサーはアジアを目指して欲しいのです。先日の中国視察で実感したのは、20年後にアジア・マーケットは北米とカナダのように、ひとつになるということ。だから「墨攻」の井関惺さんのようにアジアの製作者たちと映画づくりを進めた方が未来に繋がるのではないかと思います。
- 大高:
- 私はいま、テレビ局にいるプロデューサーたちがテレビ局をやめて、独立するようになれば面白くなると思っていますね。テレビ局で培った人脈を生かして、自分の会社をつくって思う存分映画づくりをする。日本の場合は地上波の力が異常に大きいという世界的にも珍しい国だから、本来ならテレビ局出身者が、俳優とのパイプが太いプロデューサーとして大きな力を発揮できるはずなんです。ハリウッドのように。
- 掛尾:
- でも日本の場合は誰が独立してもテレビの影響力の背景がないと難しいのではないでしょうか。現状ではテレビの力を頼らないと日本国内では大きなことができない。私はやっぱりアジアを目指してほしい。日本のなかに、国内派と国際派という競合があるのも面白いと思います。
- 大高:
- そういう意味では「L─」はワーナー配給でアジア全域をターゲットにした作品ですよね。ワーナー・ブラザースはローカル・プロダクションとして日本映画の製作に力を入れていますが、ローカル・プロダクションとしての本来の目的はアジア全域の市場開拓ですから。
- 掛尾:
- 製作者はともかくとして、オダギリ ジョーや妻夫木聡や浅野忠信など、俳優達はすでにアジアで活躍していますね。
- 大高:
- そうそう、だから製作者より俳優の方が先にアジアに進出しているんです。今度キム・ギドク監督の作品にオダギリ ジョーが主演しますし、「モンゴル」の浅野忠信はアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品の主演として騒がれました。本来ならプロデューサーもそれにくっついて出て行かなければならないんですが、いまのところ俳優の動きが先ですね。
- 掛尾:
- だから私はこういう作品をつくる意欲的なプロデューサーが日本人の中からどんどん出てきて欲しいのです。特にインディペンデントのプロデューサーは、日本だけではやることに限界があるんですから。
|
|
|
|
 |
|
|
 |
|