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映画興行対談
映画興行対談

第16回「2008年、いま日本映画界に求めること」

掛尾:
先日、映画製作者連盟が2007年の全国映画概況を発表しました。これによると一昨年、日本映画が興収シェアで外国映画を逆転し話題を呼びましたが、昨年は再びハリウッド映画が盛り返し、日本映画のシェアは47.7%と再び50%を切りました。そのような状況を受けて、今回は、いまの日本映画が置かれた状況を客観的に検証し、将来どういう方向を模索すべきなのか、というところまで語り合っていきたいと思います。
大高:
いまの映画状況を見て、私が感じるのは、ここ数年の日本映画の活況を担ってきたテレビ局の製作手法が、ちょっと観客に飽きられてきているのではないかな、ということなんです。特にこれまで日本映画の復調を牽引してきたフジテレビの手法が曲がり角を迎えているのではないかと思うんです。
掛尾:
これまで、普通の人の日常をドラマ化したり、さらにテレビ・ドラマをそのまま映画化したものを、ある種、非日常的な映画館で上映しながらも、フジテレビは成功してきました。これは、フジテレビに限ったことではなく、日本テレビ、TBSの作品にも濃淡はあれ、共通するものはあります。先日も、テレビ局の若手プロデューサーが講演で、「テレビ局は黒沢清監督のような作品には出資しないのですか」という質問に「個人的には作家性の強い映画は大好きだが、うちではつくれない」と言っていたんです。「好きだけどやれない」と。
大高:
フジテレビは観客側を向き過ぎて、逆に飽きられているのかなという気がしますね。今の発言で言うと、黒沢清監督なんかも以前は「スウィートホーム」のような娯楽作品も撮っていますし、彼を作家性云々と狭く規定をすることはないんですがね。
(C)2008映画「チーム・バチスタの栄光」
製作委員会
チーム・バチスタの栄光 (C)2008「L」FILM PARTNERS
(C)2008「L」PROT PRODUCE
L change the WorLd 今年も「チーム・バチスタの栄光」(上)、
「L change the WorLd」(上)など、
テレビ局製作の話題作が大ヒットしている。
ただ、今年に入って公開された「陰日向に咲く」や「チーム・バチスタの栄光」などもやはりテレビ局がつくった作品ですが、一種の企画ものでテレビドラマの映画化とは一線を画す方向性を出しています。「陰日向に咲く」は20億円近くはいきそうですし、「チーム・バチスタの栄光」も20億円を超えるだろうと見込まれています。さらに日本テレビがワーナー・ブラザースと組んだ「L change the WorLd」も30億円以上は確実な状況です。
今年の正月映画は「マリと子犬の物語」が30億円を超えただけで、あとの作品は散々で日本映画にとっては非常に厳しい興行だったのですが、今年に入ってからは勢いを再び取り戻したと言っていいんじゃないでしょうか。
掛尾:
そうでしょうか。私の映画ジャーナリストとしての経験から見ますと、映画のトレンドというのは一定周期で循環していると思えます。興収シェアの底だった2002年から06年まで、主にテレビ局の力によって日本映画が急激にシェアを伸ばしてきたのですが、ひょっとしたら一昨年(2006)がピークになるのかも知れない、と考えているんです。
というのは、テレビ局はスペクタル映画が苦手じゃないですか。いまは、ハリウッド映画も飽きられていると言われていますが、その中には「ナショナル・トレジャー」や「ボーン・アルティメイタム」のような、凄い製作費を掛けた娯楽アクションもあり、それなりのヒットをしています。これらの作品と比較すると、どう考えても、最近の興収20億円クラスの日本映画は見劣りします。
これは、1987年を境に一気に日本映画が外国映画にシェアを奪われていく時期の状況と重なるのではないか、というのがわたしのトレンド循環論の根拠です。その頃、ブロック・ブッキングの邦画がローカルでも急速に動員を落としたのですが、それは、やはり邦画がパターン化して飽きられたんです。そして、新しいカードを切ることができなかった日本映画は、外国映画に離されてしまった。この時と同じように、現在の軽いドラマが中心の日本映画よりは、やっぱりハリウッド大作の方がいい、と普通の観客は思いだすのではないかと予想しているのです。
私は先日、中国の映画事情について視察に行ってきたのですが、そこで痛切に感じたのはアジア市場に向けた映画づくりの重要性です。中国では近年、「HERO」や「PROMISE」「墨攻」など、アジア全域に向けた大作づくりに取り組んで、成果を収めています。韓国でも現在、アジア市場向けの大作を4本つくっている。韓国は国内の市場規模に限界がありますから、プロデューサーがみな、海外に目を向けているのです。それに比べればまだ日本は国内市場が大きいですから、海外に目を向けるプロデューサーが少ない。でも実際には、東宝配給作品以外はみな厳しい状態です。
大高:
そもそも東宝1社で日本映画全体の60%のシェアを占めているのはやはり異常な状態ですよ。テレビ局の映画の話に戻りますが、「陰日向に咲く」は東宝の企画に日本テレビが乗り、「チーム・バチスタの栄光」はTBSの企画に東宝が参加し、それぞれ両社が共同幹事会社になっているのですが、「L─」も含めてこれらの作品はそれぞれ全く異なる発信方法を実践し、好結果を出している。だから、これらの結果を検証することは、他社にとっては非常に大事なことになると思うんです。今後の作品で注目しているのは東映がテレビ朝日と組んだ「相棒−劇場版−絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン」(5月公開)と、松竹がやはりテレビ朝日のドラマの映画化作品を配給する「特命係長 只野仁 劇場版」(12月公開予定)ですね。東宝以外でどういった結果が出るのか、これは注目したいですね。
「特命係長─」は先に放映されたスペシャル版が視聴率20%を超えた人気番組ですが、何故、テレビ朝日は関係の近い東映ではなく松竹と組んだのか。「相棒─」は映画化すれば当然、アクションの要素が入ってくるのでしょうが、あの人情ドラマのファンが果たして本当にそれを望んでいるのか。そうしたことを検証していけば、東宝以外の他社もやり方によってはまだまだ伸びしろがあると思うのです。
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