キネマ旬報映画総合研究所
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映画興行対談
映画興行対談

第15回「恋空」

大高:
確かにこの作品には、少女たちが願望してやまない男性の理想的な姿がしっかり描かれていましたからね。人生の機微を認識している人たちは少し距離感を持って、ギャグというか若い女の子特有のファンタジーとして理解することもできる。
でもね、多分ケータイ小説を熱心に読んでいる多くの女の子達にとっては、この作品にリアリズムを感じるのだと思う。この作品のポイントはそこなんですよ。
掛尾:
だって実はレイプあり、妊娠ありっていう物凄い話じゃあないですか。
大高:
そうそう。しかもレイプシーンは “綺麗なレイプシーン”なんですよね。ここはある意味、恐ろしいシーンですよ。花畑の中で、綺麗にレイプされるように意図的に描かれている。つまり、観客の女の子にすれば、このシーンは記号に過ぎないわけです。
これではレイプの持っている残虐さが曲解されてしまいますよ。あぁ、大したことないんだって。
掛尾:
後の妊娠に繋がる場面として図書館でセックスするシーンがあるじゃないですか。見ながら乗り切れない私は、石井隆バージョンが観たいと、つい意地悪になってしまいました(笑)。癌になった三浦春馬も全くやつれていないし。言ってみればお約束で物語が進行していると言った感じですね。
(C)2007 映画「恋空」製作委員会
恋空
大高:
ああいったところは最近の、一部の韓国映画のノリに近い感じがしたんです。教室や図書館、病室のシーンもみな、綺麗に撮っていて、現実世界にある汚さを一切画面に出さない。若い観客達もそうした世界に憧れていて、汚いものは観たくないんじゃないかな。
掛尾:
いまの子たちは身近では援助交際だ、妊娠だと、綺麗ではない日常を生きている。だから逆にそうした日常を美化したいのかも知れない。なにしろ本当は凄惨なことが全く凄惨に描かれていませんから。
大高:
でも、これは怖いことですよ。私達から観れば家族の描写にも全くリアリティを感じないのですが、でもひょっとしたら、これが現実なのかも知れない。いまは子供にものを言えない親が多いし、あの家族の空洞化には変にリアリティがある。だから私達からすればありえない世界だけど、若い女の子達にとっては実はリアリズムなんです。
正直言って、私はこの作品からは何もインスパイアされないけれども、こうした作品がいま、つくられたという現実は認めなくてはならない。むしろ、何故、ヒットしたかということに興味を持たない世間の鈍感さこそ問題なんです。ひょっとしたらこの映画の成功は、将来の日本社会が地雷のようなものを抱え込んで突き進んでいるということを、ものの見事にさらけ出したのかも知れない。そうした点にマスコミは誰も触れていないし、検証もされていませんよね。
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