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映画興行対談
映画興行対談

第14回「2007年上期の日本映画興行を振り返る」

掛尾:
集中したというより持っているカードをみんな切ってしまったという感じかな。
大高:
「西遊記」「HERO」は今年の大きなカードでした。でも50億円以上の作品が何本か並ぶよりは、10億、20億円の作品がばーっと何本も並ぶ方が健全だと思うんですよ。映画好きが満遍なくいろんな作品を観に行っているということですからね。スーパーヒットがないのでトータルの数字は下がるかも知れませんが。
掛尾:
そこで思うのは東宝だけに集中しないで東映や松竹でもヒット作が出るようになれば…。
大高:
そう、そこに行き着くわけですよ。東宝は9本のうち8本が10億円を超えたけど松竹に関してはこの夏から秋にかけては全作品がコケました。「ゲゲゲの鬼太郎」や「大日本人」あたりまではいいとして、「ピアノの森」から「夜の上海」まで8本連続で惨敗した。
これが大問題なんですよ。ラインナップを見ても、どう考えても当たるとは思えない作品が配置されている。「未来予想図」と「象の背中」は新しいマーケティングが成された今秋の注目作ではありますが、これがどうなるか。
それから比較すると東宝の場合はやはり情報戦に物凄く長けている。作品の内容と情報戦の仕掛け方が抜きん出ているんですよ。
掛尾:
昔ながらの活動屋じゃなくて、外部、異業種の人間と映画に限定されない、一般的なビジネスの話を普通にできるボキャブラリーを持っている人材が東宝にしかいないということですかね。
よく映画業界の人間は「映画業界は特殊だ、特殊だ」と言うんですが、それはどの業界でも特殊性はあります。だから他の業種と組むときはなるべく合わせなければならない。本来ならテレビ局だって東宝1社と組まなくてもいいはずなんだから。
大高:
例えば「Life 天国で君に逢えたら」なんて、本来なら東宝のブロックブッキングには入ってこない企画ですよ。ただ、桑田圭佑をこの映画の主題歌に持ってきたから成功した。中身ではないんですよ。桑田圭佑の音楽によってあの暗いテーマにも関わらず若い層を動員することができた。興収17億円くらいですが、大健闘です。当初は誰も10億円いくとは思わなかったのですから。
掛尾:
でも僕は東宝もちょっと変わってきたのかなと思っていて、例えば三池崇史監督の「クローズZERO」。あれは東映っぽいですよね。
大高:
実はこれが秋の大注目作なんです。劇画がもの凄く人気があって、前売りがもの凄く売れている。少し前に「ワルボロ」という映画がありましたが、これと同じで、「クローズZERO」は本来なら東映がやっても全くおかしくない企画です。
でも不思議なことに当たりそうな不良ものは東宝で配給されるんですよ。これが正直、私には良く分からない。
掛尾:
やっぱり東宝がやるとメジャーなアイドルがキャスティングされていますからね。東映だと本当の不良映画になってしまうでしょ。映画は面白くても支持率は下がってしまったりする。
大高:
確かにそうだ。東映がやると本物の不良が出る生々しい不良映画ができてしまう(笑)。東宝はろ過された不良映画。ろ過されたところがいまの若者のテイストには合うんだろうね、もろの不良映画より。
「クローズZERO」は三池監督なんだから、これまでの感覚だとこっちの方が生々しい映画になってもおかしくない。ところが東宝の作品になると三池監督も変わるということか。
確かなことは東宝のマークが付くと遊びができなくなるんですよ、「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」のような。
掛尾:
ところで、さきほども話したように観客が映画に飽きてきたという問題がありますよね。
大高:
確かにいま、映画そのものの魅力に惹かれてくる層が減っているのかな、という感は否めないですね。それは邦画、洋画問わずにです。むしろ洋画の方がその傾向は強い。
掛尾:
大手はともかく、特に単館系の映画がいま、全く振るわないですよね。以前だと単館ロング興行で10万人動員して興収1億2〜3千万人という作品が、年に10本くらいあった。いまは単館ロングという興行形態がなくなり、単館系から出てくる話題作がほとんど無くなった。
大高:
去年は何本かありましたがね。「寝ずの番」「佐賀のがばいばあちゃん」「かもめ食堂」といった作品が。今年はせいぜい「キサラギ」くらいかな。別格として「エヴァンゲリヲン新劇場版:序」があったけれども。
やっぱりここにきて、単館拡大公開という形態が定着して、単館興行の魅力が薄められてしまった感じはしますね。
掛尾:
そもそも単館拡大公開というのは、配給会社の要請で始まったわけです。洋画の場合は買い付け価格が上がり、単館ロングだけでは興収が足りないし、日本映画になれば、原価はさらに高くなる。また、資金回収を早めたいといった配給会社の思惑があったんです。ところがいまは逆に、劇場側が興収アベレージを上げるために作品を早めに切り替えてしまう。そうなると今度は、P&Aなどが拡大しただけ原価が上がっているから、配給がつらくなってしまう。
さきほど大高さんがおっしゃった情報戦ということもありますが、話題作り、仕掛けだけで当てて、作品の力では当てることが出来なくなってしまった。映画界全体にそういう流れが蔓延しているから、特に単館系の配給会社はみな疲弊している。
だからこのあたりで興行、配給含めて、改めて単館ロング公開という形態も取り戻すべきではないかと思うんです。
大高:
そうだね、洋画の買い付けロイヤリティーが高騰した結果、単館上映だけでは回収できない状況になったことがある。でも、いまは日本の配給会社も反省して、海外の映画祭などでもそれほど馬鹿な値段では買い付けなくなっています。一部の例外を除いては。
売る方も「日本人が買わなくなってきた」という危機感を持つようになったけど、日本の配給会社はこれからももっと価格を下げる努力をしなければならないでしょうね。
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