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映画興行対談
映画興行対談

第14回「2007年上期の日本映画興行を振り返る」

掛尾:
最近しばらく中断していた「映画興行対談」ですが、久し振りの今回は、2007年夏までの日本映画の興行を振り返ってみようと思います。これまでのところ、映画全体で見ると前年対比で95%くらいの興行成績ですよね。
大高:
1月から8月までの邦洋13社の数字で前年対比96%くらいかな。この7、8月の夏興行で、前半の不振を盛り返すことができなかったということですね。というのは、今年の夏興行は凄く期待されていたじゃないですか。「西遊記」があり、「ポケットモンスター」があり、洋画では「ハリー・ポッター」もあるということで。
ところが「ポケモン」の50億円はともかくとして、他の作品が目標数字をことごとく下回った。それからこの秋にかけての興行で、さらに失速しているんです。当初は「HERO」が秋興行を主導して全体を引っ張っていくのではと期待されたのですが、週刊誌あたりに「見込みを下回っている」と書かれている状況です。
「HERO」は400スクリーン以上という、東宝としては画期的なブッキング体制を取っているので当然、公開直後は数字が上がるのですが、ここに来て、3週目あたりから失速している。現段階(9月28日)では、当初に喧伝された100億円という数字は難しい状況ですね。
掛尾:
80億円なかばから後半くらいですか?
大高:
80億円を上回って、どこまで数字を伸ばすかというところです。フジテレビが公開後の宣伝にも物凄い力を入れていて、そういうことが追い風になるかなと思って見ていたのですが、いまのところはそれほど効果が上がっていないですね。
ただ、80億円台というのは凄い数字であることに変わりはない、本当は。でもスタート時点でプロデューサーが「踊る大捜査線 THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」(174億円)を上回るとか言ってしまったからね。大いに誤解を受ける。公開前にこういうことは言ってはいけないんですよ。
もちろん士気を盛り上げるために敢えて言っているんだろうけど、数字を大きく言うと自分の首を絞める結果になってしまう。80億円でも凄いという形に持っていかないと。はじめに「150億円超える」なんて言っちゃうから、週刊誌あたりから「思ったより不調だよ」と言われてしまうわけですよ。
私は「海猿2」は超えてくるだろうと思っていました。そこが勝負ラインだなと思っていたんです。「海猿2」は71億円、「THE有頂天ホテル」が61億円。これらを超えなければ失敗だなとは思いましたが、結局その2本は超えるわけですよ。でも100億円を超えるというのは大変なことです。
まぁ、それでも「HERO」はいいとして、他の映画がことごとく目標を下回った。
掛尾:
今年の夏は「ダイ・ハード4.0」「トランスフォーマー」と洋画で40億円前後のものが出ました。「レミーのおいしいレストラン」なんかは大健闘じゃないですか。
大高:
「ダイ・ハード4.0」は当初は50億円という目算があったんです。それが39億円でしょ。「トランスフォーマー」に至ってはかなり足りない。公開前は最悪「宇宙戦争」並みの60億円が目標って言われていたんですが、かろうじて40億円に乗るかどうかですからね。これらハリウッド映画が、かつてに比べて20〜30%下がっていることも、映画全体の数字が底上げできない一因でしょうね。
掛尾:
外国映画は今まで年間興行収入1,400億円ぐらいできていたのが、去年、初めて1,000億円を切り、興収シェアでも日本映画に逆転されました。でも今年は少し盛り返して、前年より多少は良くなるでしょう。
大高:
興収シェアは、1月から8月の実績では外国映画が全体の56%、日本映画が44%くらいです。「HERO」などでその差は縮まるとしても、最終的には外国映画が日本映画を上回るでしょうね。でも邦洋トータルの興収は昨年より下回る可能性が高い。
掛尾:
07年の年間観客動員1億6,000万人は微妙なところですね。
大高:
そうですね。08年は正月映画にもこれといったものがないですから。
掛尾:
どう考えたらいいんでしょうか、いまの映画界の状況を見ると、「西遊記」「HERO」「大日本人」のような普段映画を観ない人が観る作品は当たるんだけど、普通の作品がどんどん下がってきている印象がありますね。つまり映画好きが映画を観なくなってきているのではないかと。あの東宝でさえ「HERO」などの大作以外、去年に比べて相当に落ちている。
大高:
でも東宝は、興収アベレージは依然として高いんですよ。今年は邦画系では「Life〜天国で逢えたら」まで9本公開して、そのうち8本が興収10億円を超えている。超えなかったのは「バブルへGO!!タイムマシンはドラム式」だけで、これも9億円前後はいっている。 ただ、去年は興収50億円超えた作品が東宝は4本あったのに、今年はこれまでのところ「HERO」1本だけです。「ポケットモンスター」は今、49億数千万円で微妙なところなんですがね。ともかく50億円を超えるようなメガヒットが昨年に比べて減ったことは確かですね。
掛尾:
東宝は去年が凄く良かったから、これだけヒット作を出していても、前年対比で見ると80%くらいになってしまうんですよ。今年は東宝1社で年間興収500億円が微妙なところですかね。
大高:
でも「ALWAYS 続・三丁目の夕日」は製作サイドが1,000万人動員が目標といっていますから(笑)。興収120億円ですよ。本当はそういうことは言うべきではないんですがね。どうなるか分かりませんが。
掛尾:
社内を引き締めるためや景気づけにはいいかも知れませんが。東宝はそういう状況だとして、東映、松竹はどうでしょう。去年、日本映画が復活したと言われて観客も増えたんですが、その人たちが「似たような映画ばっかりだな」ということで映画館から遠のいている感じがするのですが。
大高:
ここ数年、日本映画が注目されてきて、去年、ついに数字となって表れた。で、今年になって数字が良くないのは、作品の仕掛けがうまくできなかったことが大きいと思う。私は去年1年間の日本映画の勝因は情報戦にあると思っている。「THE有頂天ホテル」「デスノート」あたりが非常に巧妙な情報戦を展開したんです。
掛尾:
ただそこで作品の質が伴っていれば観客も「映画って面白いんだな」と思うんでしょうが。僕は大作でも普通の作品でも邦画の作品の質が総体的に下がっているという印象を受けるんですよ。テレビドラマと映画のドラマの違いがあまり無くなってきているから、観客は「もういいかな」と思っているんじゃないかと。
昔だと「敦煌」や「天と地」のように映画会社が、社運を賭けてつくる作品がありましたよね。でも最近ではそうした映画づくりは「男たちの大和/YAMATO」くらいしかないじゃないですか。映画とテレビは違うものという差別化が全くされていない。
大高:
それは映画会社がテレビ局側に甘えてしまったことが原因ですよ。ここ数年はテレビ局のつくった作品を配給していればヒットしたから、そういう構造に甘えてしまったということがあるんじゃないですかね。
でも、いまはテレビ局でも大規模な情報戦が機軸になっていますから、そうした映画は毎年何本もはつくれないんですよ。去年はたまたま、仕掛けが可能な作品が集中しただけですよ。
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