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- 掛尾:
- 今年の後半は「フラガール」が凄かったですね。シネカノンは、「ゆれる」「フラガール」と、好調が続きました。
- 大高:
- 数字でみると、「ゆれる」は5億に達していないかと思いますが、「フラガール」は14億位です。これは単館作品としては、凄い数字ですよ。しかも「ゆれる」同様「フラガール」は原作のないオリジナル作品で、テレビ局も絡んでいません。
- 掛尾:
- そうですね。「フラガール」はシネカノン代表の李鳳宇さんが、「月はどっちに出ている」で映画製作をはじめてから、「のど自慢」や「パッチギ!」「青いうた」……と試行錯誤してきて、ついにあるひとつの完成型にたどり着いたと思います。従来インディペンデント映画というのは作家が前面に出ているものですが、本作はプロデューサー発の映画になっていると感じました。プロデューサー視点の娯楽作品をインディペンデントから発信し、多数の観客に届けられたという印象なのですが、こういった成功をおさめたインディペンデントの娯楽作品って、これまであまり無かったんじゃないですか? インディで好調な映画会社ではアスミック・エースもあげられますが、興収約17億の「木更津キャッツアイ」などはテレビ局が噛んでいるし、アイドル映画の傾向もあるから今作とは意味合いが違うんじゃないかと。「フラガール」には現在の日本映画過多状況の中で、勝ち残るためにどういう映画を提供すべきかというヒントがある気がします。
- 大高:
- まず、今回の「フラガール」を製作したシネカノンが他社と比較して独特なのは、国内に8スクリーン、そしてソウルに1サイトのシネコンを持っているということです。代表の李さんは、つまり映画プロデューサーと配給者、興行者を兼ねているわけですが、これは本当に大変なことなんですね。映画を作ったプロデューサーはみな、劇場を持ちたいという夢を持っていると思う。しかし、劇場を持ったからといって、自社製作作品で1年間52週間番組を埋めるのは至難の業であり、番組編成には大変な労力が必要とされるわけです。シネカノンの場合は、ここを押さえておく必要があります。
それで「フラガール」ですが、「Shall We Dance?」「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」など、アルタミラピクチャーズが作り続けている“頑張る感動エンタテイメント”の路線だと私は考えています。個人や集団が、あるひとつの目標に向かって努力することで感動が生まれ、ここに大衆訴求力が生まれていく作品の系譜ですね。
- 掛尾:
- 特に「頑張れベア―ズ」や「飛べないアヒル」などの“ダメチームがチャンピオンになっていく”という系譜ですよね。その系譜でありながら、私は伏線の張り方だとか物語の展開がアルタミラの諸作品と比べて周到だなと感じました。例えば日本の昔のプログラムピクチャーの作り手には、笠原和夫など、取材をして計算で脚本を構築することができる人がたくさんいたと思いますが、今はそれが撮影所で技術として継承されることはないから、個人のプレーになってきていると思うんですよね。
- 大高:
- 似た路線と言いながらも「フラガール」と「ウォーターボーイズ」を単純に同列化はできません。「ウォーターボーイズ」は公開当時、“男子のシンクロ”という側面が新しく、楽しくてシャレた感覚があって、若い人を中心にお客さんが来ました。一方「フラガール」は“フラダンスと常磐ハワイアンセンター”を絡めた、非常に土着的な印象の映画で、観客は年配層が多かった。公開規模で言えば「ウォーターボーイズ」は全国100館近い劇場だったのに対し、「フラガール」は220館位。ともに“単館拡大公開”(ブロックブッキング方式ではなく都内の数館を合わせて公開する興行形態で、地方はシネコンなどが参加)と言われる劇場展開ですが、これは1999年に「ライフ・イズ・ビューティフル」で松竹富士が始めたと言われています。01年には、邦画でははじめて「ウォーターボーイズ」がシャンテ・シネを中心にして“単館拡大公開”されました。その後、単館拡大はどんどん規模が大きくなっているので、「フラガール」の220館というのも今や珍しい話ではありません。ちなみに「ウォーターボーイズ」の時代は興収9億円でも大ヒットだったわけです。
- 掛尾:
- さっきからインディペンデントの旗手として、アスミック・エースも引き合いに出していますが、アスミックの場合も、最近は監督というより「プロデューサー主導の映画」と見える作品が多くなってきているように思います。しかし、松本大洋、安野モヨコ、くらもちふさこなど、カルトな漫画原作ものが多いので、シネカノンの大衆的な路線とは異質な印象です。それは、アルタミラの桝井さんやシネカノンの李さんが、例えば出張先でご飯食べているときにテレビでのど自慢を見て、「のど自慢の映画つくろう」とか、「男子のシンクロを映画にしよう」と発想する企画の立て方とは違うからでしょうね。
それで「フラガール」ですが、最初に「フラガール」と聞いたとき、「フラダンスを映画で?」と思ったんです。安倍首相の奥様をはじめ、日本中で、凄い数の女性がフラダンスやってることは知っていたので、なるほどそういう目の付け所もあるのかとは思いましたが、こんなヒットに結びつくとは思わなかった。
- 大高:
- 確かにそういう意味では、李さんの作る映画は出来事や実体験に着想を得たものが多いかもしれませんね。アルタミラの桝井さんもです。しかし、当たり前ですが両者の資質は全然違いますよね。一方は都会派で、もう一方は泥臭いというか。
- 掛尾:
- そうですね、大高さんの指摘通り、都会性とローカルという感じはしますね。しかし、方向性は異なっても、プロデューサーは基本的に儲かる映画を作らなくちゃならない。そこで、儲かる映画を作ろうとする時に、もう少しプロデューサーの役割と責任をハッキリさせなければならないと思いますね。特にインディペンデントのプロデューサーは、テレビ局や大手映画会社とは違う隙間を狙う視点が求められる。作家と寄り添って、自分たちの映画作りを追及するということではなく、観客への迎合でもないバランスが必要になってくるんじゃないかと思います。
- 大高:
- 2006年1月上旬号のキネ旬で、李さんと対談を行ったんですが、彼は「フラガール」についてはもっと上、つまり20億以上を狙っていたそうなんですね。シネカノンは、過去に「誰も知らない」が90万人を動員しているんですが、単館拡大公開作品は、動員100万人というひとつの壁があって、これを越すのは相当難しいらしい。「フラガール」も動員150万人以上という数字を狙っていたそうなんですが、結果は100万人ちょっとで、こういった単館拡大公開作品の興行の、ひとつの限界が分かったとおっしゃっていました。
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