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- 大高:
- 以前は、シリーズものの一作目が十何億、二作目がその数字を数段上回る作品なんて、「インディ・ジョーンズ」「エイリアン」「ターミネーター」のようなハリウッド映画しかなかったわけですよね。1は意外に数字が上がらなくて、2になった時点で爆発するわけです。ただし、最近の日本映画の「シリーズ二作目」のヒットは、これらハリウッド映画の二作目のヒットとは全然違いますね。さきほどから言っているような巧妙な仕掛けが重要だということです。
- 掛尾:
- 「エイリアン」にしろ「ダイ・ハード」にしろ、ヒットはやはり作品的な要因ですよね。テレビでバンバン露出していたなんてこともなかったし…。
- 大高:
- 少し前のハリウッド映画には、「作品の強度」があった。パート2に至って、内容的に様々な工夫が為され、一作目にあった強烈なエッセンスによりパワーが加わっているので、映画の力によって観客動員が大幅にアップしたというような構造があった。まあかつてのハリウッド映画も、二作目が70億を超える「海猿」のようなヒットの仕方はなかったですが、今のようなシネコンの普及があれば、それに近い数字になったかもしれない。
- 掛尾:
- 僕は、「LIMIT OF LOVE 海猿」を多くの観客が娯楽映画として楽しむことは、喜ぶべきことだと思っています。ただ何度も言っていますが、テレビ局が大きな影響力を駆使してプロモーションを行うことには行き過ぎを感じます。興行収入70億となると、他の作品への影響が大き過ぎる。
- 大高:
- しかしそれは、作る側の責任というよりも、何といっても観客側がそれに乗せられてしまっているわけですよね。
- 掛尾:
- 確かに観客は変化しています。テレビは不特定多数の人々に向かって情報発信し、一方映画は、発信者が作りたい作品を市場に出し、そこに見たい人が有料で集まってきた。そのふたつは棲み分けていたんだけど、観客側の入場料金の対価についての価値観が変わって、無料で見れるものに近いものでも対価を払うようになった。観客の質が変わった一方で、従来の映画製作側にも対応の悪さがあると思いますが。
- 大高:
- 私は「LIMIT OF LOVE 海猿」のような、映画の間にテレビドラマを入れるというような製作、宣伝戦略のやりかたは悪くないと思いますね。
- 掛尾:
- 昨年の日本映画興行収入上位20作品のうち、フジ、NTV、TBSが参加した作品が9本あって、その興収合計が約440億円です。一方、成人映画を除く、独立系の公開作品は214本もあり、その興収合計は67億円強しかないんですね。テレビ局製作の映画は公開直前になるとあらゆる番組に関係者が出てきてプロモーションする。免許事業であるテレビ局数社が、自社の時間で自社商品のプロモーションをするわけです。その結果が日本映画全体の興行収入の相当なシェアを占めてしまっている。テレビ局ではない製作会社には、バラエティ番組に、バンバン出演者や監督を出すというやり方はできないわけですから、広告枠を買わなければならない。だから度を越すとやはりアンフェアなのではないかと。
- 大高:
- 確かに、その問題は重要だと思います。洋画配給会社からも、批判の声が出始めている。あとさきほど、現在の日本映画のヒットは、いわゆる「作品の力」というところでは語れなくなっているという話が出ましたが、「作品の力」とは何か?といったとき、「LIMIT OF LOVE 海猿」は、観客が劇場で泣いて、満足度も高いという意味での「作品の力」があると言えるのではないでしょうか。私自身は、この作品に対して疑問点がたくさんありますけどね。
- 掛尾:
- 映画の満足度について考えるとき、やはりそこにも観客の変化が関係していると思います。90年頃から、若い世代が昔のATGやゴダールなどのアート系の映画から離れていき、次世代のファンはサブカル映画に向い、その次の世代はサブカルからエンターテインメントに向かいつつあるような気がします。若い人たちは、昔ほどシネマライズに代表されるような文化圏の映画に足を運ばなくなってしまった。サブカルチャーがなくなって、メインストリームになった。高校生たちがシネマライズにいかないで、「チェケラッチョ!」をみているとか。また一方、メジャーである東宝が、「嫌われ松子の一生」のような、例えばアスミック・エース配給、シネマライズ公開などでやるような作品を手掛けるようにもなりましたし。
- 大高:
- それを東宝だけでなく、これから松竹、東映もやろうとしているわけですよね。
- 掛尾:
- 若い人がシネコンでデートしようという時に、昔はジュリア・ロバーツやメグ・ライアンの映画でデートしていたのが、今はおそらく「LIMIT OF LOVE 海猿」ですよね。
- 大高:
- 興行のバランスということで言うと、「LIMIT OF LOVE 海猿」に拮抗するようなパワーのあるハリウッド映画が減っているんですよ。夏前だと「ダ・ヴィンチ・コード」くらいしかない。しかしこの手のハリウッド作品は、年に何本もないわけです。今や「キング・コング」程度ではだめなんです。本来「キング・コング」のようなハリウッド映画が、パワーのある日本映画に拮抗しなくてはいけないのですが、それが出来なくなってきている。
- 掛尾:
- レコード業界では洋楽が売れていたんですが、1990年ぐらいから、J-POPがどんどん売れるようになった。僕は同じ現象が映画には来ないと思っていました。映画と音楽では製作費が全然違うから。90年代後半に「J-MOVIE」という括りでJ-POPに対抗して打ち出したじゃないですか。あの時は、低予算のインディーズ作品ということもあって、大きな流れにはならなかった。それが結局テレビ局が映画を作り始めてから、流れが変わったわけでしょう。「踊る大捜査線」あたりから。そして今や、洋画が低落して「J-MOVIE」時代といえる。
- 大高:
- 確かにフジテレビは80年代に「南極物語」「ビルマの竪琴」などを製作しましたが、監督は映画畑の人を起用していた。
- 掛尾:
- 80年代は、テレビ局は映画産業に対して、自分達はテレビ屋であるということで、姿勢としてはひいていたと思う。おそらく「踊る大捜査線」あたりから完全に映画人とは違う立脚点から映画を企画するようになったと思います。
- 大高:
- 映画会社の方も、その頃は自社の監督がいて、自社監督を起用することをひとつの条件として、テレビ局主体の作品を製作していたと思いますし、テレビドラマとは質の異なる作品を製作していくという姿勢があった。現在は映画会社も、そのような姿勢がなくなってきたわけです。典型的なのはテレビドラマ『大奥』を映画化する東映でしょうね。『大奥』といったら東映の原点ですよ。これまで東映は、テレビ局がからむ作品では、撮影所の監督を起用するケースが多かったですが、今回の『大奥』の監督はフジテレビのディレクターになりました。ついに東映もフジテレビの軍門に下ったという気がしますね。
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