キネマ旬報映画総合研究所
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映画興行対談
映画興行対談
第5回「ALWAYS 三丁目の夕日」と「カーテンコール」
「カーテンコール」娯楽性 VS.作家性
大高:  「カーテンコール」は、角川のエンジェル大賞を受賞して作られた作品で、やはり昭和三十年代の下関の実在の映画館を舞台にした作品です。もちろん興行的には「ALWAYS 三丁目の夕日」のヒットとは比較になりませんが、他の単館作品と比べてそこそこ健闘をしているし、今、チェーン公開と単館系で同時期にこういった同時代設定の作品がかかっているのが興味深いと思います。タイプは全然違う映画ですが。
掛尾:  僕はこの作品にのれなかったんですよね。ポイントとしては、日本映画が斜陽になっていく昭和三十年代を描いているけれど、後半はほどんど在日をテーマに、映画館で幕間芸人をやっていた男が娘を置いていなくなって、数十年後に再会をするという話。にもかかわらず在日を描いているということが宣伝でも全く伏せられていた。あとは、幕間芸人の男が娘を置いていなくなる理由が全く描かれていなかったこと、そして藤井隆演じる若い頃の幕間芸人が年をとって井上堯之が演じている、つまり1人の人物が違う役者で描かれていたのは、この映画において非常に違和感があったんです。
大高:  私はそういうふうには観なかったです。歳をとった幕間芸人は井上堯之だからいいと思った。というのも、この映画のポイントは幕間芸人の歌う歌にあると思うんです。ドラマ的に見れば、不自然なところはあるかもしれません。ただ私は歌を聴く分には、藤井隆よりも井上堯之の声が流れた方が感動は深かったと思う。井上尭之のあの風貌の中に、芸人が歩んできた人生が表れているような気がしたんですよね。
掛尾:  大高さんみたいな鑑賞者ならいいけど、一般客にそこまで通じるかな。
大高:  それがこの映画の面白いところで、余白じゃないけど、想像させていく楽しさがあると思います。「ALWAYS三丁目の夕日」と比較すると、俳優に対する演出はケタ違いにうまい。特に、「ALWAYS三丁目の夕日」の吉岡秀隆の演技で考えると、あれは吉岡秀隆自身によって見せている部分が大きいと思うんです。「カーテンコール」の佐々部監督が演出したら、演出部分を通して吉岡秀隆の本来的な像とは違う表出のさせ方をさせていくのではないか。何故俳優の話をしたかというと、「カーテンコール」はさっき言った歌の部分プラス俳優の演技でみせられてしまったところがあるんです。
掛尾:  同じ昭和三十年代を描くといったとき、この映画はある種のリアリズムがある。ただそのリアリズムの中に、三十年代の日本人、また在日朝鮮人の抱えていた重さはなかったですよね。
大高:  しかし人間の生々しさが出ていると思います。両作品は昭和三十年代を題材にしつつ、狙っているところも、演技の仕方も全然違う。
掛尾:  何度も言うようだけれど、僕はこれを娯楽映画とするならば、主人公の幕間芸人を1人の俳優が演じた方が良かったと思うし、彼が娘を捨てたやむにやまれぬ理由もきっちり描かれるべきだったと思います。親子の再会のドラマなので。その辺がないところが、興行的に弱いポイントなのではないか。
大高:  それは批評的な指摘ではあるかもしれないけれど、興行的なところではどうなのかな。『いつでも夢を』をはじめ色々な映画の歌を流したり、映画の断片を上映したりするところで一種の大衆性を押さえつつ、あとは俳優に対してのこだわりを全面展開したかった気がする。それほど、俳優を楽しむ映画なんですよ。まあ掛尾さんが全然のれないところからして、物語展開に少し隙間風があるのはわかるとしても。
掛尾:  来ている年齢層はやはり高いですよね。
大高:  「ALWAYS 三丁目の夕日」と違うのは、年齢層が下に広がっていなくて、世代的にはある限られた人が来ているのが問題かと思います。
掛尾:  宣伝が実際の映画よりも娯楽色を出していて、実際見るともっと重いテーマ性がある作品だと思うんですが、それでももっと泣けたりすると口コミで入ったと思うんですが。
大高:  ミニマーケットなりのヒットはしてもらいたい映画でしたね。「ウォーターボーイズ」クラスの一般性にならないと、テーマ性のある邦画の単館拡大は難しいということもあるかもしれない。
掛尾:  今の時代にヒットする映画というのは、勿論映画の質もあるけれど、ある種のインパクトは必要ですよね。「誰も知らない」みたいにとことんいく映画だと逆にインパクトが強くて、口コミが広がる。「パッチギ!」なんかも、在日の話を前面に出して宣伝していたときに、この作品は何をポイントで出していくかっていうと、『いつでも夢を』でとことん歌謡映画に徹した売り方をすればいいかというと、作家性を考慮してそれはやりたくはなかったのかと。
大高:  「ALWAYS 三丁目の夕日」はある意味突き抜けている感はありましたからね。
掛尾:  「ALWAYS 三丁目の夕日」だって、多分これまで描かれてきた単なる下町人情ドラマとして描いたって全然当たらなかったと思います。だから皆がやらないから当たらないんじゃなくて、やらないから敢えてやるというのは必要ですよね。
大高:  確かに、今重いテーマの日本映画が当たらないといったって、数年後はどうなるか分からないし、各製作者がこぞって同じ方向を向いても駄目なわけで、その中で新たなものが突出してくることに期待したいと思います。
第6回 「男たちの大和 YAMATO」
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