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| 掛尾: |
この映画はセンスがあって良いんだけど、一方で整合性が取れてないことも多々あると思います。例えば、色々な服を着るお茶目なシーンがあったじゃないですか。どうしてあのように彼女の気持ちが変化していったのかというのが、あまりにも説明が無くて物語を見ている気分としては違和感があった。その割りに平気で見せてしまうのは、画面画面のシーンに力があるからでしょうね。魅力的なシーンなんだけど、それぞれのシーンが際立ちすぎてうまく繋がらない。それから、メインのオダギリ、柴咲、田中泯のドラマと、ゲイの老人ホームの「旅路の果て」のような物語が並列して描かれ、融合しないのが不満だった。父と娘の誤解と和解が圧倒的に迫ってくると、今よりもなおヒットしたんじゃないかな。
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| 大高: |
一つの整合性をもって見ている観客にとっては、ディスコのシーンも若干違和感を持つかもしれないですね。ちょっとタガが外れていくので。リアリズムなのか、お遊びなのかお笑いなのかという見極めがしにくいんですよ、この映画。
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| 掛尾: |
そうですね。
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| 大高: |
それから数十年前ならこの企画は、絶対映画にならないと思います。ゲイをどう描くのかというのは、もの凄く難しくて、そもそもゲイを描くことのその難しさとともに、タブー性がありましたよね。コミカルにしつつ感動にもっていくというような方法もあったと思いますが、今回そういう作りではない。「メゾン・ド・ヒミコ」をよく映画化したと思いつつ、よりこの作品が観客動員できたんじゃないかという点でみると、企画そのものの中に、危ういものが含まれていたんじゃないかと。それはどういうことかというと、ゲイの世界は都会ではすんなり受け入れられるものの、それは一部の地域にとどまってしまうということなんです。この壁を打ち破るのが、人間ドラマ自体の新機軸だったんですよ。
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| 掛尾: |
僕は、ゲイは一つのファクターであって、そのことよりも、感動の沸点が前作の「ジョゼと虎と魚たち」に比べて低かったんじゃないかと思います。
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| 大高: |
「ジョゼと虎と魚たち」との比較でいうと、シネクイントとシネマライズの違いはありますよね。スカラ座と日劇1くらいの差はあるでしょう。今回は日劇1だから、製作費も宣伝費もある程度かかりますよね。しかしこの題材は、その製作体制やマーケティングに果たしてふさわしかったかということがあったと思う。これは、結果論ですけれどね。面白いと感じた企画が、ゲイの人たちと柴咲との興味深いドラマに進行していかない。
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| 掛尾: |
地方が弱いというのは、ゲイに対する保守性というよりも、描かれている世界のスノビズムというかアートというか、そういうものに対するものじゃないですか?
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| 大高: |
私はスノビズムとは感じなかったけど……。
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| 掛尾: |
でも、オダギリとか柴咲の訴求力は地方にもあると思うので、どのくらいいくかが見どころですね。さきほどの感動の沸点という話に戻すと、「ジョゼと虎と魚たち」に対して「メゾン・ド・ヒミコ」はドラマとしてのカタルシスが分かり辛かったと思うんです。同じように厳しいテーマだけれど、「ジョゼと虎と魚たち」の「主人公が身体障害者の女の子と恋愛をして、しかし最後にはサポートしきれなくて泣く」という感動の方がインパクトがあり、誰もがもっている気持ちを描いたのに対し、「メゾン・ド・ヒミコ」ではある種の普遍的な父と娘のドラマがはっきりとしたかたちで描かれていたわけではなかった。
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| 大高: |
そこは曖昧な感じではありますよね。この映画は「何それ」というような、柴咲の台詞が多かったけど、映画全体が、親子関係や人間ドラマを描くというよりも、「何それ」という柴咲のとまどい部分が一人歩きしている感じなんですよね。それからもう一つのゴタゴタであるオーナーが捕まって『メゾン・ド・ヒミコ』をどうするのかという問題が消えちゃったりとか。本来なら平行して話として繋げなくてはいけないと思いますが、色んな方向にいくから分からなくなってしまうんですよね。
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| 掛尾: |
この映画の企画はいいし、企画に対する挑戦もいいと思う。父とその若い男の恋人、娘の物語と老人ホームのドラマのバランスが悪いことも映画の魅力になっているとさえ思います。しかし、この企画のテーマの根本的な限界というのも、興行では示されたということですかね。つまり、大健闘してシネマライズでは非常に好調に動員をしましたが、大高さんも私もこれはもっといって欲しい企画だった。しかし、ある上限があったというか。
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| 大高: |
映画的なカタルシスはありましたよ。シーンシーンでは本当に力があったと思うんですよね。だからこのテーマでこれだけ魅せる力というのは凄いと思います。そしてそれを手掛けたアスミック・エースという会社が凄い。
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