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| 大高: |
原作自体にある「若い世代の人たちとの接点」に、うまいこと映画の要素が注入されているわけですよね。ファッションだとか。上滑りするとどうしようもない違和感をもつと思うんだけど、あのちょっと異様なファッションを、なんとなく見せてしまう映画の全体性があった。これは変な演出をしたら、完全に浮いてしまうと思う。宮崎あおいのにやーというあの笑い顔、あれも少女漫画ですよね。個々でみると漫画だけど全体でみると映画になっているという、際どい均衡の上に成り立っている映画だと思いますよ。これはプロデューサーの狙い以上になっているんじゃないか。
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| 掛尾: |
もちろん演出家が指示をしていたと思うけれど、俳優たちが原作を読み込んでそれをモノにしているというのは凄いことだと思います。そういう意味ではやはり、クリエイティブ側のプロデューサーの指示がどう出されていたのかは興味深い。
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| 大高: |
「NANA」は「女の子映画」「音楽映画」であると同時に「ラブストーリー」でもあって、中島美嘉と松田龍平演じるレンが、「究極の愛」みたいなところにいきつくじゃないですか。中島の肉体にある刺青とか、2人で老後の話をしたりとか、レンの「子供つくってもいいよ」という会話とか。その「究極の愛」を今の若い人たちは驚くほど求めているんだよね。理想形の「究極の愛」を。自分もいきたい、その世界に!(笑)という。
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| 掛尾: |
「究極の愛」と軽く言ってしまえるような世界がありますよね。
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| 大高: |
重くてドロドロしていたら駄目なんでしょう。でも「通じ合っている気持ちの強さ」が映画には出ていますよ。そのふたりを見ている宮崎あおいは、観客側の傍観者的な位置でもあります。
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| 掛尾: |
ローカルから男を追いかけて上京してフラれちゃって、フリーターに近いような仕事しかしない、というのは普通の子が感情移入できますよね。
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| 大高: |
いきなり宮崎がクビになるところだとか、漫画的なシチュエーションをあっさり逸脱していくかのようなリアルな世界をきっちり描いているのがいいんですね。
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| 掛尾: |
映画の作り手にとって、『NANA』のような完成された原作世界を映画化するのって、冒頭でも触れたとおり、エッセンスを映像化するのと、新たな解釈を加えるというような方向があると思います。意地悪な言い方をすれば、商品化するか作品化するかみたいな。
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| 大高: |
漫画を映画化する際いつも思うのは、「演出家の咀嚼の仕方が重要」ということですね。いわば、漫画との距離感のとり方。今回は俳優の肉体をきっちり撮るという、大谷監督のある種吹っ切れた、すがすがしい演出だったと思います。
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| 掛尾: |
例えば映画「ぼくんち」では強烈な西原理恵子ファンが、映画の出来に満足しなかったですよね……。それから「ピンポン」「青い春」「恋の門」などはカテゴリーとしては単館向け漫画だと思うので、メジャーでやるには難しい。
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| 大高: |
東宝の場合は、監督が企画を自己の世界に安易にはめ込んでいかないような、チェック機能が強いと思います。松竹、東映以上に。事細かにプロデューサーに指示を出しているのか、シナリオの段階なのかは分からないけれど。
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| 掛尾: |
メジャー漫画を元にメジャー映画を作ってこういう成功を成し得たというのは、初めてということですかね。「GTO」は東映でやって不調でしたよね。あのときは日本映画が低落していた時期ということもありましたが。「サラリーマン金太郎」。あれも映画ではうまくいかなかった。ともにテレビはうまくいきましたが。
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| 大高: |
というより、「NANA」は特殊ケースかもしれないですよね?
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| 掛尾: |
それはそうですね。19、20の女の子たちにとって、生き方を投影できるカルト漫画ですから。松本太陽原作のように、トンガっている映画ではなく、全国の若い女性たちも共感できる映画になっている。そういう意味では、作家主義的な会社にとって、この原作は盲点だったのかもしれないですね。
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| 大高: |
ただこの対談のテーマ「興行」という観点から外れて「NANA」を作品として見ると、もっとやれたんじゃないかなと思います。これは、無いものねだりではないですよ。東宝の場合、伝統的にアベレージ勝負で、作品の質が全体的に高い会社ですね。平均的に70点〜80点をとっている。しかし90点、100点かというとそうでもない。「NANA」は90点を狙うこともできた。東宝は昔からプロデューサーの力が強い会社で、対して松竹、東映は監督の力が強かった会社。それはいまだに尾をひいていて、今、プロデューサーの力が強い会社が「NANA」のようなヒット作を連発しているわけです。
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第4回 「メゾン・ド・ヒミコ」 |
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