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| 掛尾: |
最近、観客が二極化していると感じるのですが。つまり、ある一方の観客は“シネマライズ”、“恵比寿ガーデンシネマ”で公開されるような「真夜中の弥次さん喜多さん」、洋画なら「ボウリング・フォー・コロンバイン」、「華氏911」とかを見るわけですよ。またメインの最大公約数の観客は「交渉人 真下正義」とか「スター・ウォーズ」といった超話題作に集中する。要するに業界でAロード、Bロードといいますけれど、Bロードで公開される作品が全然あたらなくなってしまった。観客はBロードで公開される作品は最初から、ローテーションの3番手、4番手と値踏みしてしまっている。
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| 大高: |
Bロードのチェーンと言うよりも、お客さんが別に日劇だから見るというようなことが崩れてきたわけよ。ピカ2でもいいわけ。昔は日劇だから見るというような人がいたんだよ。日劇でやるんだから、それなりのバリューのものをやってたわけじゃない。
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| 掛尾: |
日劇で上映される映画はそれなりに宣伝費をかけた映画が出てくるから、観客に情報が伝わります。基本的には超A級映画ですね、「宇宙戦争」のような。なかにはつなぎの作品も出てきますけど。ですから、最近は超Aクラスの観客が集中し、シネコンでは2〜3スクリーン開けてしまう。一方、Bロードの映画には、なかなか観客の関心が集まらない。今、洋画輸入配給会社が厳しいのは、シネコンの効率的上映から勝ち負けが開いてしまうことが大きな要因でしょう。それが輸入配給会社を日本映画製作に向かわせているのではないか。
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| 大高: |
例えばね、「ホステージ」という松竹配給の作品があって、どう考えたって今どきブルース・ウィリスの作品を、丸の内ルーブル系に組むという発想は、ちょっと考えられないわけですよ。ただ、買い付け値段が高くなっている現状が、一方に厳然とあるわけじゃないですか。そうするとそうしたチェーンに出さないと、収益が出ないというところに追い込まれてくる。インディペンデント系の配給会社というのは。だから、洋画の方の話になっちゃうけど、買い付け値段をとにかくギャガが90年代に上げすぎたっていうのがあるわけです。高値で買いすぎたばかりに、全体の値段がものすごく上がってしまった。これもう下がらない。松竹は「ホステージ」に関しては、公開直前になって共同配給にしてリスク軽減をしてるわけですよ。それじゃなんでこれを買ってくるのか、という話になってくる。
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| 掛尾: |
そこで現在、各社が日本映画にシフトし始めていると。
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| 大高: |
松竹の場合、去年の「CASSHERN」にしろ「クイール」にしろ、ある程度数字が上がった根拠がかなり脆弱だった気がするんだよ。東宝みたいにある種の連続性の中でヒット作品が出てるのではなくて、一本がたまたま良かったのを勘違いしたんじゃないかと思うんだよね。つまり、邦画が商売になると。その前奥山体制の時は失敗してるわけだから、そういう流れで邦画ブロックを断ち切って、数年間してまたそこそこのヒットが出たっていうところで、もう一回冷静に客観的にそうした状況を分析すれば、今年のようなことはなかったと思う。だからどこかで政治的なものが動いているんじゃないかと危惧もしている。例えば誰かのつるの一声とかね。「オペレッタ狸御殿」がいかにあやうい企画かということは、プロの人たちは分かりますよ。これは鈴木清順の作品の評価とは別の意味で。
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| 掛尾: |
洋画から邦画へ急激にシフトしていく過程で、今かなり混乱もしていますよね。この流れでも、スムーズにシフトしたのが東宝系ですよね。昨年から東宝系に出る邦画はすごい興収をあげています。「踊る大捜査線」、「黄泉がえり」、「世界の中心で、愛をさけぶ」、「いま、会いにゆきます」そして最近では「交渉人 真下正義」、「電車男」、「戦国自衛隊1549」が同時期に公開されている。ミニ・チェーン系でも「下妻物語」、「スウィングガールズ」といったヒットを出しています。ムーブ・オーバーの受け皿のようなシャンテがミニ・チェーンのチェーン・マスターとして高稼働するようになった。インディペンデント系でも「誰も知らない」やさっきから話に出ている「真夜中の弥次さん、喜多さん」がヒットしました。こういう状況が邦画へのシフトになっているのでしょう。そこで、もうひとつ、ここ数年の傾向として、映画業界のM&Aをはじめといて、多くの異業種が参入しました。さっき言った混乱というのは、それぞれ異業種のさまざまな考え方で映画ビジネスにアプローチすることによる混乱もあるでしょう。そういった会社が参加した製作委員会になどは特に。アート系の企画に大きな製作費を投下したり、単館向きの作品を拡大公開したりと。今後、すごい勢いで邦画が市場に出てきますが、そういうミスマッチもかなり起きるのではないでしょうか。「オペレッタ狸御殿」もミスマッチでしょうね。わたし個人としては、あの作品を大画面で見れたのは楽しかったですけど。しかし、ビジネスの側面では、鈴木清順監督のフィルモグラフィー見れば、製作費は4億5千万円くらいと言われていますが、そんなにかけちゃいけないわけですよね。一方、クリエイティブの側面からは、確信犯的にああいう企画を実現してしまうというのは、ちょっと楽しいですね。株主や出資者だったら怒っちゃうけど。
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| 大高: |
それは、製作費が高いからある程度のチェーンに出さないといけないという発想に、なってしまうわけですよね。「オペレッタ狸御殿」に関していうと、ちょっと巧妙だったのはチャン・ツィイーが主演に起用されていたこと。松竹はだから、ちょっと可能性にかけたのかもしれない。「HERO」が当たってるから。そこで松竹が受けたということはあり得る。ただ企画全体の危うさを、チャン・ツィイーがはね返すだけの興行力はないわけですよ、日本においては。
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| 掛尾: |
今やぺ・ヨンジュンを除けば、スターで観客を呼べる映画はないでしょう。「四月の雪」の前売り券の売れ行きはすごいですけど。
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| 大高: |
そうなんだけど、「HERO」「LOVERS」みたいな流れで出た気はするね。ちょっとね、そういう作品が入り込める松竹の何か弱さが見つけられちゃったんだろうな。
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| 掛尾: |
映画にはビジネスと文化という両面があることは誰もが知っているけれど、そのバランスがなかなかとれない。考えてみれば、芸術とビジネスが両立した映画を作るのは最も難しくて、娯楽やアートに徹するほうが容易なわけですよね。またも松竹を例に出すと、オールタイム・ベスト・テンなんかを選ぶと、上位に松竹映画がズラッと並んで、木下恵介、小津安二郎から連なる、伝統的にいい映画を作ろうという良心がありますよね。それがビジネスとなかなか両立しにくい。東宝にも、今年、生誕百周年のイヴェントが行われている成瀬巳喜男や黒澤明がいますけど。
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| 大高: |
考えたら面白いよね。儲かっている会社は儲かっている映画ばかりやって、儲かっていない会社は儲からない映画ばかりやってるんだよね。どういうことかって言うと、結果じゃなくて、儲かりそうもない映画ばかり儲からない映画会社がやっている。そこでの錦の御旗が芸術ってことかね。これは、芸術って何なのか?というところにまで辿りつく問題だと思う。一番無責任なのは映画祭だな。カンヌ映画祭。あのレッドカーペットは、ある種の催眠状態であるし、一瞬の映画を作る喜びみたいなのは出るんだけど、終わると借金がのしかかってくるという装置。映画祭の人は、後々のことに対して一切責任はないからね。こっちが勝手に行ってるんだもん。
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