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第1回 日本映画の復活
第1回 日本映画の復活
各社の体制
大高:  ただ、今興収のシェアを見ると、邦画3社で90%、その内東宝が60%って、やっぱり東宝なんだよね。東宝の強さの要は、これまではジブリとフジテレビとアニメなんです。この3つでおそらくかなりの収益を占めてきた。ジブリ1社で、東映、松竹以上の成績になってしまう。この3つがマスコミなど色々なところで話題になり、社会面や映画祭をにぎわしている。フジテレビの場合は自分のメディアで宣伝しちゃうわけだから、その浸透力は大きいでしょう。だから今言ったミニチェーンの作品というのはひとつの形としてはありますが、日本映画の大きな顔ではないわけね。ただ、その3つの柱があまりに大きすぎちゃって、松竹などは1999年に邦画のブロックブッキングから撤退したわけです。けれども松竹はそこで吹っ切れずに、日本映画を洋画系で出そうじゃないかということになっている。そういう流れがあるにも関わらず、東宝だけは万全な体制でずっときているところが日本映画の良いところでもあるし、問題点でもある。
掛尾:  さっき言ったように、インディペンデント対大手三社でいえば、インディペンデントのシェアが大きくなったほうがいいし、大手三社でいえば、もっと競いあうシェアのバランスがあったほうが、全体の発展になるのではないかと思います。興行網を持っている三社があって、それぞれが競い合うということで、健全な発展があるわけですよね。東宝は「世界の中心で、愛をさけぶ」や「いま、会いにゆきます」で大ヒットをとばしていますが、一方、松竹は「たそがれ清兵衛」、東映は「半落ち」といったヒットを出しています。それぞれの社の独自性を築くことも必要でしょう。当然各社考えていることでしょうが。
大高:  例えば自動車産業を見ても、トヨタがナンバー1なわけですよ。じゃあ二番手三番手の日産やホンダがトヨタと極端な差があるかっていうとそうじゃなくて頑張っている。東宝がトヨタだとすると、日産、ホンダがどの程度やっているかということなんだけど……。東宝の場合、蓄積が長いんですよね。要するにこの1、2年でヒット形態ができているわけじゃないということ。これは僕の持論なんだけれども、1980年に「ドラえもん」の第1作目が公開されて、ここでアニメの定番ができた。ヒット作品というものが毎年恒例化するわけですよね。さらに「クレヨンしんちゃん」がくる、「名探偵コナン」がくるというふうに確固とした点が、ひとつふたつと積み重なってローテーションが固まっていくんですよ。これに二十数年かかっている。その原点に僕は「ドラえもん」があったと思ってる。その過程で、フジテレビのヒット作品「南極物語」「タスマニア物語」などの大作から試行錯誤の作品も含め、だんだんと線になっていくという流れができ、90年代末に「踊る大捜査線」が出た。これもフジとの長年にわたる関係のたまものなんですね。松竹、東映がそういうことをやってきたかというと、やっていないと思うんだよね。
掛尾:  東映は邦画系のチェーンに春と夏の「マンガ祭り」を定番として大きな実績を残していますが、松竹は5つのフリーブッキングのチェーンがあるのに、定例のアニメの開発が弱かったですね。「アンパンマン」や「ガンダム」はありますけど。
大高:  東宝というのは製作せずに配給することによってリスクを下げてきたことが、成功の理由であると言われてきた。当然さっきも言ったように、マーケットが強いから他のところがどんどん企画を持ってきて、自分は出資しなくても映画館を提供するだけで配給手数料を取るというシステム、確かにそれはそうだった。90年代っていうのはそうした手法によって確かに安定していたと思う。しかし、それが去年あたりから明らかに変わってきた。「セカチュウ」という、東宝が主体になって、代理店やテレビ局を巻き込んだ作品が大ヒットした。これはおんぶにだっこじゃなかったってことでしょう。自社企画に近いものが、テレビ局や代理店を巻き込むことによってひとつのブームを作り出す能力があったということです。要するに、東宝は今まで配給中心にやってきた会社で、それで伸びたんだけど、実はその間に企画に関する様々な認識を新たにし、ヒットの方程式のようなものをつかんできたんですよ。社員の中にもそういう意識が芽生えて、企画を他社と一緒に練りながら、ヒットに結びつけていくことが可能になってきた。
掛尾:  さきほどの自動車会社の例えでいうと、かつては、“技術の日産”“販売のトヨタ”と言われていました。日産は“R380”というレーシング・カーを開発してレースで常勝していた。一方、トヨタはレースよりも販売網の整備の力を注いだ。そして経営が磐石になったところでF1に出て行った訳です。逆に日産は技術を追求し、行き詰まったら今度は野放図に販売網を広げて会社がおかしくなってしまった。この二つの会社の足跡は、クリエイティブにこだわりを持っていた松竹と、劇場網をきっちり整備した東宝という関係を連想してしまいました。まぁ、日産もシッカリ再建されましたし、松竹も昨年はV字回復しましたけど。
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